ノーゲーム・ノーライフの著者・榎宮祐が暇奈椿と共著として出している『クロックワーク・プラネット』。
その1~3巻を読み終えての感想です。
設定的には未来なんですが、歯車などの技術が発展して出来た不思議な世界観の物語でした。
こういうの、ファンタジーって言えば良いんですかね……?
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あらすじ
全てのものが、この星までもが時計仕掛けで再現・再構築された世界。
落ちこぼれの高校生・見浦ナオトの目の前に突然黒い箱落ちてきた。
その中に収められていたのは綺麗な自動人形の少女だった。
自動人形の少女・リューズを修理したナオトだったが、それによって彼の運命は大きく変わることになってしまう。
政府の陰謀や地球を作り直した人物『Y』への妄執。
そんなものお構いなしに自動人形への愛を叫ぶナオトと愉快な仲間たちの物語。
感想
2017年4月からアニメの放送も始まったクロックワーク・プラネット。
もともとノーゲーム・ノーライフのあとがきで何度か名前を見かけることがあったのでいつか読んでみようと思ってたんですよね。
この物語の主人公・見浦ナオトは落ちこぼれの高校生でした。
ただ1点、すごい特別な才能がある以外は。
その才能というのが『ものすごく耳が良い』というもの。
この字面だけだとパッとしないのですが、物語中では凄まじい能力として描かれます。
舞台となっているは滅びを迎えてしまった地球。
ただ、『Y』と呼ばれる人物が星をまるごと作り変え、時計仕掛けにしてしまった世界なんですよね。
そんな世界だからこそ、遮音性100%のノイズキャンセリングヘッドフォンを着けたまま遥か下層の歯車の音を聞き分けることが出来るナオトの能力は有用であり恐怖ともなりうるものなんですね。
まぁ本人はそんな自覚はありませんでしたが。
1巻のあとがきにもあるように、この『クロックワーク・プラネット』は天才たちの話だと思っています。
天才たちがそれぞれの得意分野で全力を尽くす。
そんな神懸った技を見せつけていくような。
そして世界の陰謀を打ち砕いていくような。
そういう話だと思います。
たとえば最初に挙げた主人公・見浦ナオト。
同時代の最新鋭の機械ですら聞き分けることのできない音を聞き分ける能力を持っていますが、その能力の本質はまた別のところにあります。
その本質というのは『正しい形を音として知ることが出来る』というものなんですね。
だからこそ、その力を元に技師として物を直し、作り上げることが出来るんですね。
また、マリー・ベル・ブレゲも天才と言えるでしょう。
彼女はナオトとは異なり、努力を以てその領域に踏み込んだ人間です。
もともと才能はあったのでしょう。
でもそれ以上に、自分の限界を決めず、更に上へ上へと進むことが出来るという才能を持っている人間です。
そんな彼女だから、3巻のようにナオトの力を借りてではありますが、『神の領域』とでも言うような境地に踏み入ることが出来たのだと思います。
上の2人は主要人物として『天才』として扱われているのですが、それ以外にもハルターやベルモットだって天才ですし、3巻で少しだけ出てきた唐沢だってきっと才能のある人物だったりするんじゃないでしょうか?
ハルターの異質性とでも言うべきものは、3巻で明らかにされた『機械との適正』でしょう。
ベルモットの能力はその戦闘経験から来ているものかもしれませんが、自動人形のAIを司るパーツのみを壊す、というような妙技。
このような『天才』、または『異質な人間』たちがそれぞれの分野で全力を発揮する。
それがこのクロックワーク・プラネットという物語を押し進めているように感じています。
リューズやアンクルといった自動人形達ももちろんすごいのですが、戦闘シーンがすごいかっこいいのですが、それはある意味『自動人形だから』といった言葉で片付けられるようなものだったりもしちゃうんですね。
でも人間が、生身じゃないのもいますが、その力を才能を能力を出し切って行くのが本当にかっこいいんですよ。
気になる点
いいところを一気に書いたのですが、全く気になる点が無かったわけでもないのでちょっと底についても書いておきます。
といっても1点だけなんですが。
この物語世界の設定は最初にも書いた通り『作り直された地球』で、作り直されてから1000年経っているんですね。
それだけの時間があれば鎌倉幕府が出来た時と現代くらいの違いはありそうなものなんすが、この物語世界では現代と同じような名前や文化がそのまま残っているんですよ。
例えば秋葉原。
現代と変わらず、あれこれパーツやらなにやらが売られている場所として描かれています。
例えば東京。
こちらも現代と変わらず、首都として機能しています。
しかも東京タワーなんかも残っています。
正直この辺の設定があまり納得できないんですよね。
そう言ってしまうと『地球を時計仕掛けに作り変えるってどういうことだよ』というのも出てきてしまいますが、そうではなくて。
物語を構成するための重要な分岐として世界が作り変えられたのは全然許容出来るのですが、そこからの1000年で現代と文化がほとんど変わっていない、地名も変わらない、機能も変わっていないってさすがにちょっと無理あるんじゃないか、と思えてしまうんですよ。
確かに、突然謎の地名ばかり出てきてしまったらとっつきにくく、理解しにくい話になってしまうかもしれません。
土地の名前とかガンガン出てくるのは、その距離感覚などをそのまま利用する上では有効でしょう。
でも1000年経ってるんですよ?
そのへんが変わっていない理由もほとんど書かれずにはいそうですか、と納得するにはちょっと無理があると思うんですが。
実際には色々設定があって描かれていないだけなのかもしれませんが、3巻まで来てこれってどういうことなの?というように思えてしまいます。
この先『Y』について明かされていく中で、実はこの世界は……みたいなのがあるかもしれませんが、そろそろ何かしらヒントが欲しいなぁと思ってしまいました。
さいごに
色々書いて来ましたが、やっぱり面白いクロックワーク・プラネット。
天才たちがその能力で世界を振り回していく、そんな話になるんじゃないかと思っているんですがどうなんでしょうか?
ノゲノラの方も楽しみなんですが、こちらの先も気になります。
現在は4巻まで出ていて、5巻が1年以上止まっている状態……。
とりあえず4巻を読んでみてその先を楽しみにすることにしましょうかね。
ノゲノラの方は劇場版の監修なんかがあって多分忙しいんだと思うんですが……。
10巻も半年以上待っていますし……ちゃんと次出るんですかね……?
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http://katsuji.ni-moe.com/ranobe/clockwork_planetクロックワーク・プラネット1~3巻読了。天才たちが世界を振り回す物語。
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