ノーゲーム・ノーライフの短編集であるプラクティカルウォーゲーム。
読むだけ読んで感想を書いてなかったので今更ながら感想を書いていきます。
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感想
今回は短編ということで、本編の話が進むことはありませんでした。
ですが今までふんわり語られる事はあっても描かれることの無かったあれこれが描かれ、ノーゲーム・ノーライフの世界観を補強するための1冊になっていたように思います。
入っている話は以下の4つ。
・大戦における森精種の立ち回りの話
・ステフが壊れる話
・クラミーとフィールの過去の話
・ジブリールが龍精種を倒す話
大戦における森精種の立ち回りの話が今回のメインではあるのですが、ジブリールが龍精種を倒す話もかなり濃い話になっていて読み応えがありましたね。
では一つ一つ感想を書いていきます。
大戦における森精種の立ち回りの話
6巻でリクとシュヴィが操った勢力の一つ、森精種。
当時の森精種をまとめていたシンク・ニルヴァレンとニーナ・クライヴの話となります。
ニーナと言えば上でも書いた6巻でリクがわざと霊骸汚染された状態で挑んだ相手です。
その時の描写ではニーナ=シンクとされていましたが、実際はニーナを表に立たせて裏でシンクが活動していたということがこの巻で判明します。
まぁ実際のシンク・ニルヴァレンはだいぶ駄目人間というか、ある意味以上に破綻している森精種だったわけですが。
衣食住含めた自分のことを全てニーナに任せ、自分はひたすら研究に時間を費やすというマッドサイエンティストっぷり。
プロローグでクラミーと百合百合していたフィールを見て空が『ご先祖さん、草葉の陰で泣いてないだろうか』と懸念していましたが、実際は先祖からしてこの状態でしたからね。
ただ、それくらいにでもならないと『大戦』を廻す側には立てなかったのだろうとも思います。
6巻のリクとシュヴィも自分の生命だけでなく仲間の生命まで全部使い切って勝利を目指していたわけですし、なりふりなんか気にしていたら他の生物同様廻される側になってしまいます。
大戦を終局させることを考えるともうなんというか色々捨ててしまわないと駄目なんでしょうね
。
この話で重要なのは地精種の登場人物でしょう。
ぶっとんだシンクと方を並べるほどの天才であり、世界を廻す側の人物であるローニ・ドラウヴニル。
シンクのタガをはずれさせ、本気を出すきっかけをつくった張本人です。
一度は彼を殺す一歩手前まで到達しましたが、天翼種の介入によりそれは失敗。
その後大戦が終わってしまったことで遂に倒すことは出来ない相手になってしまいました。
つまり彼は死んでないんですよね。
シンクの血を継ぐフィール・ニルヴァレンが今の世にいるようにローニの血を継ぐ地精種も今後出てくることが予想出来るでしょう。
そしてローニもある意味駄目な生物だったりすることが判明するんじゃないでしょうか……。
あとはニーナ・クライヴですね。
彼女……だと思っていたら彼だったわけですが。
改めて読み直すと、ニーナは絶対に自分のことを『拙』と読んでいて性別がわかりにくくなっていますし、ニーナを指す言葉として『彼』や『彼女』といった言葉は一切使われていないんですよね。
そんなニーナがシンクとの勝負としてエルヴンガルドを立ち上げることになるのが最後でわかるのですが、あの時点だけを見ると2年かかっちゃったのかなぁという感じの終わり方です。
ただ子孫を残していることを元に考えると、あの時点では不可能と断じていましたが、信じ直すことで1年11ヶ月で終わらせたようにも思えますよね。
そのへんは適宜読み取ってね、というスタンスだとは思いますが。
ステフが壊れる話
続いてはステフが壊れる話について。
といっても常にステフは壊れていますが。
この話は前の話と比べるとかなり短いのですが、シンクたちの話でも感じたような『強くなるには無駄なものを捨てなければならない』につながる、というかそこだけを抽出したような話になっていました。
簡単に言うと徹夜を続け、疲労困憊したステフがぶっ壊れて悟りを開く、というもので。
こう書くとろくなもんじゃないですね。
ただまぁステフ自身頭が悪いわけではないというか、頭はすごい良いのでゲームもかなり強くなっているんですよね。
その上で悟ったというのは空単体に迫る勢いのようで。
アレな性癖に目覚めすぎているのが玉に瑕ですが、それもそれで需要はあるのでしょう。
本当に変態です。
コメディな雰囲気がかなり強い話でしたが、結局は上で書いたとおり、勝つには何が必要かというのを改めて書き出したような、そんな話でした。
今後このことを元にした話が用意されているようなそんな気がします。
クラミーとフィールの過去の話
次はフィー✕クラの話です。
話自体はエルヴンガルドを内側から崩し始めるちょっと前のパートとその1ヶ月前、空白の二人と人類種の王を競って戦うあたりのパートとが描かれていました。
クラミーとフィールがなぜ一緒にいるのか、親友となっているのか、奴隷とはどのような生活を強いられているのか、といった部分についても言及していましたね。
この話で判明するのはフィールの目的です。
フィールがエルヴンガルドを壊してクラミーと一緒に幸せになることを望んでいるのは前から分かっていましたが、その先の目的である唯一神の座を狙っている理由まで明かされました。
言ってしまえば単純で、森精種と比べると短命な人類種であるクラミーと共に生きていくためだったんですよね。
この話自体はそこまで深い話ではなくて、エルヴンガルドを切り崩すことになった二人がどのように立ち回るのかということの一端を覗くことが出来る、そんな話だったように感じました。
ジブリールが龍精種を倒す話
最後が2つ目のメインであるジブリール達天翼種の話でした。
今でこそ空たちの仲間として立ち回っているジブリールですが、大戦中は色んな話にちょこちょこ登場する『天災』でした。
この話の冒頭でさらっと流される森精種、妖精種、幻想種を倒した話は最初のシンクとニーナの話でも触れられた幻想種の捕縛と制御のところにも出てきています。
まぁそちらについてはシンクの予定通りということのようですけども。
さらにシンクとローニと戦闘中、最後の最後にも登場していますよね。
そちらでもシンク側が周到に用意していたあれこれを全て台無しにした天災として描かれています。
そんなジブリールが死にそうになりながら龍精種を倒すまでに至った話です。
これは本編でも何度も語られる『より強いものを打倒する話』でしたね。
話自体も良かったのですが、個人的には2翼の天翼種が気になりました。
1人目はアズリール。
本編でも駄目な天翼種として登場する最初の天翼種です。
ジブリールが生まれる前は最凶の天翼種として力を奮っていたようですが、今ではその影も形もなく……となっているアズリールの本気の一撃を見ることが出来ました。
その『対天翼種』特化の実力と神霊種殺しの事実を知ることが出来たのはなかなか価値が高いように思いますね。
ただ、その力のことを考えると、今の世界ではあまり活躍できないなぁというのも感じます。
アヴァントヘイムでの空白とのゲームでちゃんと変われればものすごい強いプレイヤーに慣れそうなんですけどね。
そしてもう1人はラフィールです。
この短編で初登場の片翼片目の天翼種。
本編に出ることが無いということは大戦末期に死亡したのだと思いますが、このようなキャラが居なくなるのはもったいないなぁと思いました。
なんといっても常識人ですからね。
正しく姉としてジブリールに認められていますからね。
アズリールとは大違いです。
ただ、だからこそ死んでしまうような気もします。
常識人であることが悪いことではないのですが、それだけでは大戦を生き残ることは出来ないでしょう。
ものすごいダメージを受けて今なお術式治療中、とかそういうので出てきても良いんですけどね!
さいごに
今までもちょこちょこ語られてきた大戦の話。
それを人類種とは別の視点から見ることが出来る1冊だったと思います。
劇場版で大戦を描くようですし、本編世界ができる前の歴史に厚みが増すのは良いことです。
本編を進めて欲しいという思いも強いのですが、こういう補完的な短編は読んでいて面白いので歓迎ですね。
10巻がいつになるかはわかりませんが、その前に公開されるであろう劇場版やら何やらを楽しみにしておきましょう。
他の巻の感想はこちら
ノーゲーム・ノーライフ7巻読了。世界を覆す双六の前編。ノーゲーム・ノーライフ8巻の感想、に留まらない7、8巻感想。ノーゲーム・ノーライフ9巻感想。乗り込んできた機凱種と提示された謎について。ノゲノラ新刊が近いので1~3巻を読みなおしました。ノゲノラ新刊が近いので4、5巻を読みなおしました。榎宮 祐 KADOKAWA / メディアファクトリー 2017-01-23
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http://katsuji.ni-moe.com/ranobe/nogamenolife_wargameノーゲーム・ノーライフ プラクティカルウォーゲーム感想。大戦を描いた短編集から見直すディスボードの歴史。
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